ちょっとそこまで、砂丘遠足。

毎日の長ぐつが、とりどりのズックに変わっただけで、もうワクワク。
はじめての汽車。
左右に飛んでは消え、また現れる田んぼ、家々、青い柿の木に真っ黒のトンネル…。
どこかわからないけど、遠くまで来たもんだ。


みるみる遠ざかる先頭は、砂煙と丘の稜線の向こうに抜けた。
歩き、駆け出し、立ち止まる。
しゃがむ。
砂を両手で寄せる。
腹ばいになる。
視線を伸ばす。
転がって、朝のおひさまに目をしばたく。
四つん這いから、また踏みしめ、一歩ずつ。


牛が恐竜になり、もぉ〜と雄叫びが重なり合い、潮風に掻っ攫われる。
気まぐれな歩みは、よほど確かな前進。
1人だったり、2人だったり、もっとでも、ひと繋がりの足跡が同じ場所へ、各々の歩みでまっすぐ向かっている。


風が巻き上げたシートを追いかけて、どこまでも走る。
かならず捕まえる。
捕まらないなんて、露も思わない。
どれだけそれまで歩いたかとか、そこまでどれだけかかるかとか、まったく関係ない。
ただただひたすらに、この手に掴むまで、追うのだ。
…高いところから切れ端すら見えなくても、もう一つの眼で見据えている。
そんな明るいスピード感と面白くも不思議な落ち着き具合。



シートはその先もあって、断念。
馬の背の向こうを駆け下りて、打ち寄せる波と泡を全身で賞味。
そして反対側の急斜面を駆け下りて、また這い上がり、また駆けて…。
大人が省エネモードに切り替える中、全身全霊でこの場を味わい尽くして、休むことなくやりとりを続ける。
なんだ?
このタフさは。
帰りのご褒美、飴玉ふたつ。
目を細めて、見かわしながら頬張るその満足の溢れようときたら。
なんという豊かさ。
なんという世界との結ばれようだろう。
最小限のことば。
最大限の体験と最良の関わり合い。


~mei~



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