ひとりじゃない。ひとだけでもない。
喜び勇んで出発したら、ぽん、てん、ぽてっと忘れもの。
歩きながら振り返るしっかり者が、声を上げる。
一斉に振り返って、忘れ主が順々に駆け出す。
先頭は歩き出す。3人が背負って向かう姿を確認すると、黙々とそれぞれの楽しみ探しに戻る。
煙もくもく、目はしょぼしょぼ、燻されたツンとする匂い。
乾いた杉葉にマッチ。
マッチ切れで、大人を探す。
再び火を膨らませようと、思いきり口をとんがらす。
さらに煙。
けむいや。
みな持ち場で暗黙のうちに各々の役割をこなしてる。
見つめるのも、栗を握りしめるのも、駆け回るのも、空を仰ぐのも、みんな大事。
朝のおはようと同じ。
帰りにはありがとう。
毎日違う心持ちで森へのごあいさつ。
帰りは、振り返らない。
もうみんな準備出来た。
作りかけの基地もおうちも、キノコも栗も胡桃も、ここで待ってる。
まだ青みの残る黄色の葉っぱを風にあずけ、また一緒になるのを楽しみに、長ぐつをブカブカ鳴らして、背中に今日の全部を背負って、帰るのだ。
手は見えないものとつないだまま。
~mei~
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